■ 企画展・イベント

イベント

 

ネットで短歌 ~結果発表~

nettanka-04-02

 

2017 年夏 実施分

 

te-ma
「花火」または自由

 

gurannpuri
 1首 図書カード 5000円分



  田中 亜紀子さん(45歳)三重県

kin
 まだ何も始めてない我残し最後の花火消えてしまいぬ
kin

【選評】

次々と打ち上げられる花火、最後の花火とは知らず、それが消えてしまったあとの少し寂しい暗闇が、一首から伝わってきます。さしたる根拠もなく、まだまだ時間があると思ってしまいがちな日常の、夏のひとコマとしての花火。今年の花火は終わってしまったけれど、そこから何を受け取るか。作者はしっかりと気づいたのですね。後悔だけではない、静かに前を向いた歌だと受け取りました。


jyun
3首 図書カード 3000円分



  柴山健次さん(54歳)宮城県

gin
 海沿いの長いトンネル抜けたあと花火が見えるほんのつかの間
gin

【選評】

海と山がせめぎあうような場所には、トンネルが多いですね。トンネルを抜けるとガラリと景色が変わった、というわけではないが、花火が一瞬見えた。時間の長短に関わらず、いや、短かったからこそ忘れがたい光景。車か電車かはわかりませんが、車窓から見えた花火をうまく捉えた映像的な一首です。



  櫻淵陽子さん(45歳)大阪府

gin
 真新しい線香花火に火をつける二人の世界が呼吸し始める
gin

【選評】

どこか寂し気な光景に使われることの多い線香花火を、「真新しい」と形容した初句にまず着目しました。その真新しい線香花火に火をつけたとたん、呼吸をはじめる二人の世界。消えてゆくもののはかなさを憂うより、いまここにある世界の大切さを見つけた一首。全体的な破調がやや残念に感じました。



  楠木世津さん(62歳)和歌山県

gin
 体内で打ち上げ花火さく裂し六十二歳悔いなく生きる
gin

【選評】

体内の打ち上げ花火が「さく裂」することの解釈が分かれそうな歌ですが、それが仮に病気だったにせよ、突然沸き起こった情熱にせよ、「六十二歳悔いなく生きる」という宣言に圧倒されます。これ以上ないほどに力強い意志が感じられ、思わず応援したくなるパワフルな一首。


kasaku

 

小川美樹さん(39歳)大阪府

do
秒読みは始まっている最初から線香花火の最後のしずく
do


黒石きみこさん(31歳)大阪府

do
夏の恋燃え上がれども散っていく線香花火みたく儚い
do

 


<選評者から>

「花火または自由」というテーマで、今回も素敵な歌をたくさんご応募いただきました。準グランプリは5首までですが、表現方法にもうひと工夫欲しいものは佳作としました。短歌は三十一文字で思いを伝える言葉のうつわです。独りよがりな表現になっていないか、破調はダメではありませんがどうしても必要なものなのか、リズムにも心を配り、多くの人にその歌を届けるために、できた歌は何度も声にだすなどして推敲してみてください。きっといろいろな気づきがあると思います。次回も応募を楽しみにお待ちしています。

 

 

ご応募、誠にありがとうございました。

 

 

協力・選評 与謝野晶子倶楽部 運営委員 勺 禰子