■ 企画展・イベント

イベント

 

ネットで短歌2018春 ~結果発表~

nettanka-04-02

 

2018 年春実施分

 

te-ma
「桜」または自由

 

gurannpuri
 1首 図書カード 5000円分



  和田 康さん(60歳)奈良県

kin

もろ手あげスノー、スノーと青空をアラブの友は桜追ひゆく


kin

【選評】

アラブから日本にやってきた友人が両手をあげて桜の花びらを追う。子どものようにはしゃぐ友人と、やさしく友人を見つめる作者が目に浮かぶようです。「スノー=雪」と「桜」は、おそらくアラブの友人にとってどちらもとても珍しいものでしょう。そして、はかなく溶けてしまう雪と、あっけなく散ってしまう桜の存在は、よく似ているのかもしれません。異文化交流のなかに「もののあわれ」を見つけた秀作です。

 


 

jyun
5首 図書カード 3000円分


 

森尾 広志さん(56歳)福岡県

gin

花筏辿って行けば老木がようきたなあと微笑んでいた


gin

【選評】

「花筏(はないかだ)」とは、花が散って水面に浮かんで流れるさまを筏に見立てた言葉。花びらを辿って上流に向かうと、訪ねる人もいない場所に桜の老木があった。美しい花筏をつくるくらい散り果てた老木と作者が向き合い、たたずみ、会話する光景は、一枚の絵画のようです。


 

水野 真由美さん(28歳)神奈川県

gin

たいせつなことは一度も話さない肩をならべて呑む花見酒


gin

【選評】

肩をならべて花見酒を飲む相手は誰でしょう。「(これまで)一度も話さない」から、関係性の長さがうかがえます。「たいせつなこと」は口に出したり、事細かにメールで報告することでもなく、肩を並べて感じ合うこと。その場を共有することのそこはかとない幸福感が感じられる歌です。


 

藤本 彩奈さん(15歳)広島県

gin

新学期不安と夢の桜咲き日に日に散って葉をつけるかな


gin

【選評】

いよいよ新学期。不安と夢がどちらも大きくなりすぎて、胸が高鳴る季節ですね。それでも、日に日に季節は進み、「慣れ」という日常がやってきます。作者はそこに、着実な葉の成長を見つけたのですね。ものごとに不安はつきものですが、その葉に養分をためて、次の春への夢をふくらませてください。

 


 

古賀 由美子さん(62歳)佐賀県

gin

今はもう花を忘れて心地よく光と風に葉群は揺れる


gin

【選評】

こちらも、上の歌と同様、花ではなく葉に着眼した一首です。「今はもう」「忘れて心地よく」など、歳月を大きなところから眺めている作者像を想像しました。満開の桜の下にいるそわそわした気持ちが恋なら、緑陰にくつろぐ自由でおおらかな気持ちは愛。そんなことも感じさせてくれます。

 


 

今井 克己さん(77歳)静岡県

gin

今日からのデイサービスの送迎は花に徐行の迂回のルート


gin

【選評】

週に何回かのデイサービス、送り迎えのルートも普段はきっと決まっているのでしょう。それを開花にあわせて桜並木のルートに変えて徐行してくれるとは、なんと粋な計らいでしょうか。人生の一コマ一コマを大切にする介護サービスが、この国に行きわたることを願わずにはいられません。

 


 

kasaku

 

渡会 克男さん(68歳)千葉県


車椅子初の挑戦桜坂背中を押してくれる海風


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臼井 慶子さん(49歳)神奈川県


塩漬けの桜の花を混ぜ込んで娘が握る春のおむすび


do

白井 澪さん(16歳)神奈川県


真新しい制服に袖通しつつ窓見る桜の美しきこと

do

前澤 志依さん(26歳)東京都


じいちゃんと桜トンネルくぐり抜け「来年も来よう」と笑い皺が言う

do

安田 清一さん(61歳)千葉県


涼しげに席を譲りしピアスの子最近のとは言葉飲み込む

do

小谷 悠太さん(24歳)神奈川県


早く咲け桜のつぼみ楽しみに待つ祖父の横並び見上げる

do

皿谷 一葉さん(19歳)京都府


なんにでもなれると言って僕を見る旅立つ君のふるえるまつげ

do

くるくるさん(58歳)青森県


老二人堰の桜に見守られ豊作祈り米作りする

do

奥谷 典子さん(35歳)大阪府


泣きごとや言い訳なんか恥ずかしい桜は雨も恨まないもの

do

壬生 彩香さん(18歳)愛媛県


ひとまずは犬の頭を石けんでぐしゃぐしゃ洗うための日曜

do

 

 


 

次回は7月1日(日)より、

テーマ「向日葵」で募集開始いたします。 

 

多数のご応募、誠にありがとうございました。

 

 協力・選評 与謝野晶子倶楽部 運営委員 勺 禰子