■ 企画展・イベント

イベント

 

ネットで短歌 ~結果発表~

nettanka-04-02

 

2016 冬 実施分

 

te-ma
「つばき」または自由

 

gurannpuri
 1首 図書カード 5000円分



 石山真太郎さん(21歳)岡山県

kin
君からの歌集の中に押し花のままに咲きたる椿の栞
kin

【選評】

詩的な相聞歌ですね。君から手渡された歌集の中に栞が挟まれていた、というだけの歌と言えばそれまでなのですが、その栞が押し花であること、さらに開花した椿であるということが過不足なく詠われていることで、鮮やかに開いた椿の花の像が、読者に深く印象付けられます。連作の投稿を拝見すると、歌集に栞を挟んで渡したのは作者のようです。恋の成就を椿に託した巧みな歌。


jyun
5首 図書カード 3000円分



 真野咲実子さん(22歳)岡山県

gin
母の入れたほうじ茶がまだ温かい魔法瓶なり面接へとゆく
gin

【選評】

就職活動に出かける作者に、お母さんからそっと手渡された温かいほうじ茶の入りの魔法瓶。「魔法瓶なり」と一旦強く切ることで、作者がその温かさをかみしめながらも毅然と面接に向かう様子がわかります。応援する気持ちとそれを受け止める気持ちがほうじ茶に託された、あたたかい歌です。



 中原政人さん(79歳)千葉県

gin
懐かしきつばきの歌にやや惚くる父の顔には正気浮くごと
gin

【選評】

かなりのご高齢と推測されるお父上。すべては遠く過ぎ去り、息子からみれば「これが本当にあの父なんだろうか」という表情も多くなっているようです。けれど、懐かしい椿の歌が流れた途端、見覚えのある父の顔がパッと浮かんだ。その表情を見逃さなかった、作者のやさしさから生まれた一首。



 佃史織さん(20歳)岡山県

gin
キャンパスの風に揺られて紫の名知れぬ花の一つは私
gin

【選評】

晶子はたくさんの花を歌に詠みました。歌集『深林の香』のなかに「花の名は一年草もある故にわすれず星は忘れやすかり」という歌があります。一年草のようなはかない花こそ、名前を覚えていると晶子は言うのです。作者がキャンパスの中で咲き誇っていた数年間もまた、かけがえのないものなのです。



 家森優人さん(20歳)岡山県

gin
いつも会うご近所さんに会釈するおかえりなさいに少し戸惑う
gin

【選評】

「ご近所さん」だとわかるくらいには顔を合わせていても、詳しい身の上話はしたことがない。そんな人からある日「おかえりなさい」と言われて戸惑った、作者の素直な気持ちを飾りなく詠み込んで好感の持てる一首。最初は戸惑って当然、次は「ただいま」と言えるかもしれませんね。



 合志富子さん(29歳)神奈川県

gin
公園の椿の花の咲く下で祖母の形見の『みだれ髪』読む
gin

【選評】

若者を熱狂させた晶子の処女歌集『みだれ髪』。おばあさまもきっと、胸躍らせて一首また一首と読み進めたことでしょう。21世紀を生きる作者が椿の咲く公園でそれを追体験できるとは、なんという幸せ。『みだれ髪』の中にも椿の歌が数首あります。その歌もぜひ味わってみてください。


 

 

ご応募、誠にありがとうございました。

 

 

協力・選評 与謝野晶子倶楽部 運営委員 勺 禰子